【コラム】電話勧誘販売の対象拡大 アップセル&クロスセルめぐる騒動

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 特定商取引法に関する法律施行令を改正する政令(案)をめぐって、通販業界が騒がしい。というのも、電話勧誘販売の規制が強化される結果、テレビショッピングなどの通販企業によるアップセルやクロスセルが困難になるからだという。

 通販業界団体は、テレビショッピングやラジオショッピングなどで現在行われているアップルやクロスセルができなくなる点を問題視している。改正後には、例えば、テレビショッピングの番組を見た消費者が電話で注文する際に、別の商品を案内したり、定期購入コースを勧めたりすると、電話勧誘販売に該当し、契約書面の交付などが求められるようになる。

 しかし、記者は、そうしたビジネスが日常的に行われていること自体にショックを受けた。なぜなら、商品Aを購入したくて電話したのに、商品Bを勧められたり、定期購入コースを勧められたりするのは、消費者にとっては「不意打ち」以外の何者でもないからだ。不意打ちによって次々と販売するような行為が、一般化されていたこと自体、問題だと思うのだが・・・。電話勧誘販売業者から突然電話があり、ほしい商品でもないのに次々と売買契約を勧誘されるのと、それほど大きな違いはないだろう。

 このような手法を展開した場合であっても、健全な通販企業(常識のある企業)ならば、消費者との間でトラブルを起こさないように対応できるだろう。だが、そうでない企業の場合、無理やり別の商品を買わせたり、定期購入コースを契約させたりしようとする結果、トラブルの発生は必至だ。

実際に、国民生活センターには多数の消費者相談が寄せられている。特に高齢者が多いという。テレビショッピング番組で紹介された商品を買うために電話したのに、別の商品を勧められ、試しに1回だけ購入したつもりが、実際には複数回の縛りのある定期購入契約が結ばれていた――というのが典型的なパターンだ。

 新規参入する通販企業は後を絶たず、一定の割合で悪質な事業者も含まれていると考えられる。そして、業界団体はそうした企業をコントロールできないのが現状である。

 一般消費者が安心してテレビショッピングなどの通販を利用できる環境を整備するためには、こうした不意打ち性の強い手法に対し、一定の規制を設けることは必要となる。アップセル、クロスセルについては不意打ちがない販売チャネルで展開すべきであり、まずは消費者被害を生まない状況を作り出すことが重要である。

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