【寄稿/第5回】バイオジェニクスは「二刀流」

寄稿・ブログ

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

 今年、アメリカMLBのロサンゼルス・エンゼルスで、投手と打者の「二刀流」選手として大活躍した大谷翔平選手のことはよくご存知かと思う。

 私の年代(昭和15年生まれ)では宮本武蔵の「二天一流」が著名で、二つの物事を同時にうまく行えることで「両刀づかい」とも言う。

 そして、腸内環境改善のための様々な健康法にも、この「二刀流」がある。

 人の健康のために、腸内フローラのバランスを正常に維持する従来の方法として代表的なのは、プロバイオティクス、プレバイオティクスである。

 プロバイオティクスは生きた乳酸菌を含んだ食品を摂り入れて、腸内環境を改善するものである。一方、プレバイオティクスは腸に棲む善玉菌のエサを補充し、その結果、健康に好影響を与えるというものである。

 しかし、プロバイオティクスはあくまでも生きた微生物が腸内に届くことが前提である。食品として食べたり飲んだりした乳酸菌は、胃酸などの影響ですべて生きたまま腸まで届けるのが難しいという点や、腸に生きて届いたとしても、腸内で定着・増殖することがなかなか難しいという事実がある。

 そこで、東京大学名誉教授の光岡知足博士は、プロバイオティクスやプレバイオティクスとは別の概念として、1998年(平成10年)、腸内フローラのバランスを改善するだけにとどまらず、腸内フローラを介さず身体に直接働きかける成分を摂取する「バイオジェニクス」と呼ばれる健康法を提唱した。

 生前の光岡先生の話によれば、プロバイオティクスはあくまでも生きた菌の働きによるもので、健康のためには、発酵済みの食品を食べたり飲んだりすることで、腸内環境の状況に関わらず良い成分を摂り入れることが大切である、とのことだった。

 そして、「バイオジェニクス」という新しい概念を提唱されたという経緯を、先生と対談した際に聞いた。

 光岡先生が指摘したように、バイオジェニクスは身体に直接働きかけると同時に腸内フローラの善玉菌を元気にする、まさに「二刀流」であると思う。

 メディアの報道で「二刀流」を聞くたびに、乳酸菌生産物質に思いを馳せる今日この頃である。

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