保健機能食品制度の今後を占う(2)

「食」の機能性

急がれる「PRISMA2020声明」への対応

 食品の機能性を確認するために、世界中の研究論文を集めて総合的に評価するシステマティック・レビュー(SR)。機能性表示食品の効果の証明方法はSRが9割以上を占め、SRが制度を支えているというのが実態だ。

 届出企業による適切なSRの実施は、商品の信頼につながる。そのため、消費者庁の届出ガイドラインは「PRISMA声明(2009年)」に準拠してSRを実施すると定めている。「PRISMA声明」はSRを適切に実施するための指針で、2009年に公表された。SRの質の向上に必要な27項目の報告を求めている。

 過去10年ほどでSRの手法が進化したことを踏まえ、昨春、2009年版の不十分な点を補完した「PRISMA 2020声明」が公表された。

 主な改正点として、「データ項目」「結果の統合」などの項目を細分化したことがある。このほかにも、評価対象から外した研究論文の除外理由の明確化、感度分析の提示など、いくつかの点で厳格化している。

 SRの手順を示すフローチャートも変更し、先行レビューを加味した内容とした。過去にSRを実施している場合は、先行レビューの採用論文をベースに、新たな研究論文を含めてレビューすることを明確化している。

 機能性表示食品制度のレベルアップに向けて、「PRISMA 2020声明」への対応は喫緊の課題に浮上している。

 消費者庁食品表示企画課保健表示室では、届出様式の変更がともなうものならばシステム改修が必要で、すぐに対応することはできないが、システム改修におよばないマイナーチェンジならば対応自体は可能と説明する。早急に届出ガイドラインを改正し、業界に周知することが求められている。

SRの事前登録は時期尚早

 SRの「UMIN臨床試験登録システム」への事前登録も課題に挙げられる。届出ガイドラインを見ると、「ヒト試験」は事前登録が必須だが、SRの登録は義務づけていない。

 本来、UMINはヒト試験を登録するためのものだが、SRの登録も可能。機能性表示食品のSRについても「出版バイアス」を防ぐため、事前登録を義務化すべきと考えられる。しかし、そう単純に言い切れない事情もある。SRのベースとなるヒト試験のUMIN登録をめぐり、深刻な問題が指摘されているのだ。

 例えば、UMINに登録した試験デザインと、論文に掲載した試験デザインが食い違うという事例がある。UMINに登録したものの、都合の良い結果を導くために、論文にする段階で当初の試験デザインに手を加えたわけだ。

 また、ある識者は「SRの対象としたアウトカムが主要アウトカムではなく、セカンダリーアウトカムであるなど、いいとこ取りをしたSRの報告が目立つ」と指摘する。

 不適切なヒト試験やSRが横行している状況下で、SRのUMIN登録を義務化したとしても、問題を複雑にするだけという懸念がある。このため、まずはヒト試験やSRの適正化を進めることが優先される。

 機能性表示食品のSRのUMIN登録は避けて通れない課題であるが、現時点では時期尚早と言えそうだ。

(つづく)

(木村 祐作)

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