保健機能食品制度の今後を占う(3)

「食」の機能性

進むトクホ離れ

 業界のトクホ離れが止まらない。昨年末時点で機能性表示食品の届出4,898件に対し、トクホの許可は1,068件。機能性表示食品制度のスタートは2015年。わずか6~7年で勢力は完全に逆転した。

 トクホは一握りの大手企業のための制度となっているのが現状。「トクホは一定の役割を終えた」という声も聞かれるようになった。

トクホ制度を所管する消費者庁や審査する消費者委員会では、トクホの衰退を懸念している。しかし、機能性表示食品制度の登場により、トクホの衰退は既定路線だったと言える。

 トクホ衰退の最大の理由は費用と時間。トクホの許可を得るには億単位の費用と、2~3年以上の時間がかかる。これに対し、機能性表示食品の届出は中小企業も対応可能な低コストで済み、50日程度で公表され、発売に漕ぎ着けることができる。

 もう1つの大きな理由は、両制度の役割が重複していることだ。機能性表示食品がカバーする範囲は構造・機能表示で、トクホの大部分と重なっている。

 国がトクホ復活を期待するのは、企業責任による機能性表示食品よりも、国が許可するトクホの方が信頼できると考えているからだ。

 一方、消費者にとってはどちらの制度も同じようなもの。消費者庁が昨年7月に公表した「食品表示に関する消費者意向調査報告書」によると、トクホ制度について正しく理解していた消費者は3分の1に過ぎない。両制度の違いを理解している消費者は限定的というのが現状だ。

消費者庁、2022年度に調査事業を実施

 消費者庁は、昨年度の検討会でまとまった「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する今後の運用の方向性」で示された課題に対応するため、2022年度に調査事業を行う。早ければ22年度から、遅くても23年度には検討作業が本格化する。

 示された課題は、トクホ制度全般に関わる考え方。これまでトクホ制度は改正を重ねてきたが、検討会では制度創設以降に見られる我が国の健康・栄養政策などの状況変化を踏まえることが指摘された。消費者庁の担当官は、この点も含めて検討すると説明している。

 トクホ制度の見直しは、機能性表示食品とのすみ分けを念頭に置いたものとなりそうだ。トクホ制度では、「トクホ」「規格基準型トクホ」「疾病リスク低減表示」「再許可等トクホ」「条件付きトクホ」の5つが運用されている。

 このうち、機能性表示食品ではカバーできないのが「疾病リスク低減表示」。これは「骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれない」など、具体的な疾病名を挙げることが可能な仕組みだ。

 両制度のすみ分けを考えた場合、トクホだけが可能な疾病リスク低減表示の拡充が、今後の改正論議で最大のテーマとなりそうだ。

(つづく)

(木村 祐作)

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