ファンケルはこのほど、サイトロニクスと共同で、培養した細胞の画像を撮影するだけで、生きた細胞内に含まれる複数種のタンパク質を推定できるAI技術を開発したと発表した。
通常の場合、細胞内のタンパク質発現を観察するには、免疫染色法という手法を用いる。免疫染色法は、ターゲットとするタンパク質を抗原抗体反応によって染色して観察するが、観察可能なタンパク質が2~4種類に限定される。さらに、細胞を固定する必要があり、細胞が生きたままの状態でタンパク質を観察することができなかった。
今回の研究では、細胞を生きたままの状態で細胞内のタンパク質を観察する方法の開発を目指した。細胞にダメージを与えず、撮像可能な位相差法による細胞の画像(位相差像)と、免疫染色法により細胞内のタンパク質を可視化した画像(免疫染色像)を機械学習させて、位相差像から免疫染色像を推定するAIモデルを構築した。
その結果、AIモデルによる位相差像から、生きたままの状態で特定のタンパク質発現量を示す免疫染色像を推定することが可能になったという。
この手法を用いて、ヒト表皮細胞による分化、炎症、老化、抗酸化に関わる細胞内に発現するタンパク質について検討するため、細胞の位相差像とそれぞれのタンパク質の免疫染色像を機械学習し、AIによる推定を行った。
その結果、免疫染色像から得られる各タンパク質の発現量と位相差像からAIが推定した発現量との関係がおおよそ一致し、相関関係が確認された。このことから、細胞内の発現量はAIにより推定可能であることが示されたとしている。
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