東京理科大学は5月7日、先進工学部生命システム工学科の西山千春教授らの研究グループが、腸内細菌の代謝産物が免疫応答に及ぼす影響について調査し、脂肪酸代謝産物のエノン脂肪酸が樹状細胞の炎症反応を抑制することや、ほかの代謝産物と比べてγKetoCが最も優れた抗炎症作用を示すことを確認したと発表した。
多価不飽和脂肪酸は、腸内乳酸菌が持つ酵素によって水酸化や飽和化といった代謝変換を受け、別の脂肪酸に変化する。近年、このような腸内細菌によって代謝生成される物質がさまざまな有益な生理機能を示すことがわかってきた。しかし、これらの代謝産物が免疫応答に対し、どう影響するかは解明されていなかった。
研究グループは、マウスの脾臓や骨髄から免疫細胞を調製し、複数の脂肪酸代謝産物と免疫細胞の活性の相関性について、遺伝子、細胞、個体レベルなどさまざまな角度から解析。その結果、エノン脂肪酸によりT細胞の増殖や樹状細胞の活性化が抑制され、γKetoCが最も優れた抗炎症効果を示すことがわかった。γKetoCの出発物質γ-リノレン酸はこのような性質を示さなかったことから、腸内細菌の作用によって有益な機能を持つ物質に変換されたと指摘している。
また、GPCRのアゴニスト(作動薬)やGタンパク質阻害剤を用いた実験では、樹状細胞に対するγKetoCの効果にGq型GPCRが関与することが示唆された。さらに、γKetoCには樹状細胞のNRF2経路を活性化する作用があり、NRF2欠損樹状細胞ではγKetoCの炎症抑制効果が減弱化したという。大腸炎モデルマウスにγKetoCを経口投与した実験では、γKetoCに病態改善効果があり、NRF2欠損マウスではγKetoCの効果が見られないことも確認したとしている。
今回の結果から、γKetoCが過剰な免疫反応に対して抗炎症作用を示し、その機構にGPCRやNRF2の刺激が関与していることが実証されたと報告している。
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