<コラム>トクホ復活のカギ握る3社による許可申請

「食」の機能性

 市場縮小が続くトクホ業界にとって、将来に期待を持てるような動きが出てきた。消費者庁は2月14日、疾病リスク低減表示として、「心血管疾患」「メタボリックシンドローム」「2型糖尿病」に対応する3件の許可について消費者委員会へ諮問した。

 マルハニチロのDHA・EPA入りフィッシュソーセージは「歳をとってから心血管疾患になるリスクを低減する可能性がある旨」、花王の茶カテキン入り飲料は「メタボリックシンドロームの発症リスクを低減する旨」をうたう。

 サントリー食品インターナショナルの桑の葉由来イミノシュガー入り飲料は、「2型糖尿病の発症リスクを低減する可能性がある旨」を表示する。

 トクホ制度は1991年の創設以来、大手飲料メーカーを中心に支持され、健康食品の頂点に立ち続けてきた。一方、許可を得るには億単位の費用と数年におよぶ時間がかかり、体力のある大手が市場を独占、中小企業にとっては“高嶺の花”だった。

 そうした状況が長く続いたが、機能性表示食品制度が導入された2015年度を境に、勢力図が激変。中小メーカーや通販企業が先を争うかのように機能性表示食品に群がり、当初は様子見だったトクホ企業も機能性表示食品に傾斜していく。

 業界によるトクホ離れは加速し、市場規模も縮小へ。トクホ制度の存続に危機感を覚えた消費者庁はテコ入れに躍起となった。トクホ復活へ向けて着目したのが、疾病リスク低減表示。機能性表示食品制度が手を出せない疾病リスク低減表示の拡充こそ、トクホ復活のカギを握るからだ。

 まず、消費者庁は「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会」を設置し、疾病リスク低減表示の拡充策を模索したが、結果的に失敗に終わった。

 苦い経験を踏まえて消費者庁では、申請企業が表示内容を自由に決めて有効性データを提出する「個別評価型 疾病リスク低減表示」を重視する方向へと舵を切った。利用促進に向けて、申請企業をサポートするための事前相談に乗り出した。

 これまで、許可要件が不明確で申請に躊躇していたトクホ企業も、消費者庁が事前相談に乗る姿勢を見せたことで、チャレンジに踏み切ったわけだ。今回の申請は、そうした新たな取り組みのなかで登場した第1弾に当たる。

 ただし、消費者委員会の審査をクリアできるか、表示内容について厚生労働省から“待った”がかからないかなど不透明な点もある。申請された3件は、トクホ制度の将来を左右する試金石となる。

(木村 祐作)

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