<コラム> 保健機能食品の在り方

「食」の機能性

 3月20日に開かれた消費者委員会の意見交換の様子をオンラインで傍聴した。テーマは保健機能食品の今後の在り方。学識経験者や消費者団体関係者など4人の識者が意見を述べた。

 保健機能食品には特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品があるが、消費者委員会の関心はどうやらトクホにあると感じた。機能性表示食品の人気で、業界のトクホ離れが起こり、トクホ市場が縮小している。このため、何とかしてトクホを復活させたい、ということなのだろう。

 記者は、トクホ制は一定の役割を終えたと考えている。機能性表示食品制度とだぶる部分が多く、おおよそ自然死を待つだけだと思う。ただし、トクホの疾病リスク低減表示は、トクホ制度だけに認められた領域であり、この部分は何としても残すべきだ。運用が適切ならば、消費者にとっても事業者にとっても大きなメリットがあるからだ。

 言い換えれば、将来的にトクホ制度を残すためには、疾病リスク低減表示の拡充という方法しか残っていないような気がする。

 消費者庁は個別評価型の疾病リスク低減表示の可能性を模索し、事前相談に乗るという手法によって、3商品の申請を消費者委員会へ諮問した。トクホ制度の復活が目的ならば、スマートな動きと言える。成功例が出れば、大手メーカーを中心にトクホへの回帰が進む可能性がある。

 構造・機能表示は機能性表示食品、疾病リスク低減表示はトクホ、栄養素(ビタミン・ミネラル等)は栄養機能食品――というすみ分けならば、消費者にとってもわかりやすい。「機能性表示食品とトクホの違いをどう消費者に伝えるか」という長年の問題も解消される。

 ただし、トクホの疾病リスク低減表示の拡大には、リスクもつきまとう。消費者委員会の意見交換でも、「疾病リスクの低減であり、疾病予防ではない。消費者は誤認するのではないか」という声が聞かれたが、極めて重要な指摘である。

 そうした誤認を与えないために、商品パッケージや広告の表示ルール(注意喚起表示など)を抜本的に工夫する必要があるだろう。さらに、個別評価型とは言え、何でもあり、では困る。メタ分析のレベル感、対象とする疾病の範囲などの検討も求められそうだ。

 トクホ制度の生き残りへ向けて、進むべき方向は定まりつつある。今後の消費者庁と消費者委員会の手腕に期待したい。

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