消費者庁が6月30日に行った機能性表示食品の表示に対する措置命令(景品表示法違反)は、関連業界に衝撃を与えた。
通販会社のさくらフォレスト(株)(福岡市中央区)が販売する機能性表示食品のサプリメント『きなり匠』『きなり極』の2商品について、届け出た科学的根拠が不十分だったことと、届け出た表示を逸脱したことの2つの理由から、景表法違反と判断した。
機能性表示食品で、届出表示を逸脱した表示が原因で措置命令を受けたのは今回で2例目(1回目は「葛の花」事件)だが、科学的根拠が不十分という理由による措置命令は初めてとなった。
機能性表示食品の有効性をめぐっては、届出資料の科学的根拠が不十分なケースがたびたび問題となってきた。消費者団体や競合他社、学識経験者など第三者の指摘によって発覚することも少なくなく、また消費者庁の事前チェックで発覚することもある。
疑義が生じた場合、消費者庁は専門家の意見を踏まえた上で、食品表示基準や届出ガイドラインに違反していると判断すると、届出企業に対して届出の撤回を促すことになる。
これまでの動きを見ると、指摘を受けた後すぐに届出を撤回する企業もあれば、抵抗する企業もあり、届出のやり直しのめどがつくまで撤回を引き延ばす企業もある。さらには、とことん抵抗する企業もある。
疑義が生じた届出企業の中には、「届出資料が消費者庁のホームページ上で公表されたのに、その後になって撤回を求めるのはおかしい」と強弁する者もいる。しかし、そうした考え方を持つ企業では、機能性表示食品制度のイロハさえも理解していないと言える。
機能性表示食品制度は届出資料を全面的に開示し、外部の第三者のチェックに晒して、問題があれば届出を撤回させるという仕組みだ。企業の責任によって安全性と有効性の科学的根拠を確認する制度であり、どのタイミングであっても第三者から指摘が出た場合には適切な対応が求められる。
今回の事件で研究レビューが不適切であったことは、同様の研究レビューを行った他社商品へ波紋を広げた。消費者庁は約90件の届出についても精査する方針を示している。
その結果、多数の届出で撤回となる可能性もあるが、個々の案件についてケースバイケースで判断することになる。
今回の事件は、届け出た科学的根拠が不十分であったり、不適切であったりした場合、届出を撤回すれば済む、または撤回をできる限り引き伸ばしたい、という安易な考え方に警鐘を鳴らした。
今後の展開で注目されるのが、特定適格消費者団体の動きだ。「葛の花」事件では、購入者への返金を求める活動を展開し、一定の成果を挙げた。今回の事件でも同様の動きが見られるのか、注視していきたい。
(木村 祐作)
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