【寄稿/第27回】「敬老の日」と「所長の言葉」

健康食品/サプリメント

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

「大谷光瑞農芸化学研究所」時代の思い出

 9月18日は「敬老の日」だった。この日は高齢者を敬う日として定められているが、高齢の筆者にとって大切な思い出がある。それは筆者が20代後半で、大谷光瑞農芸化学研究所の研究生だった時の話である。

 筆者はいつも、鎌倉の自宅から目黒の研究所へ出勤する正垣所長を、国鉄(現・JR)品川駅まで車で迎えに行っていた。

 そんなある日、当時五反田にあったSONYの前を走っていると、自社の車の前に、車体に「生菌〇〇〇〇」と大きく書かれているパネルバンが入ってきた。

 すると、後部座席の所長がそれを見て、「あの生菌という表現は昔によく使ったものだが、あれを飲むのなら京都に昔からある、よく浸かったすぐき漬けを食べたほうがよほど体にいい」と話し始めた。

正垣所長は「発酵分泌成分こそ体によい」と指摘

 「すぐき漬けから単離した乳酸菌は、発育する温度が低く、長い時間をかけて増殖させなければならない。牛乳培地では難しく、豆乳培地ならよく増殖したので色々とやってみたが、結果として体にいいのは菌ではなく、発酵分泌成分にあるということがわかった」。

 「すぐき漬けは、すぐき菜を塩分だけで低温で長期間発酵させて、おいしい味になっている。そのおいしさは発酵分泌成分にあり、それこそが体にいいものだと分かった。そして、生きた菌をいくら強くしても菌数を増やしてみても、発酵分泌成分のような効果はなかった」。

 このような事実を、自身の経験からさりげなく話してくれた。

 運転席の筆者は、その正垣所長の言葉から、今われわれが行っている研究は、その時代に大々的に販売されていた乳酸菌飲料のはるかに先を行っていることを痛感し、身の引き締まる思いをした。

 そして、折あるごとの「所長の言葉」が、現在の光英科学研究所の技術につながっており、礎になっている。このことは、世界の人々の健康増進に貢献する事業を推進する筆者の誇りでもある。

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