<コラム>機能性表示食品の「規格基準型」導入案で思うこと

健康食品/サプリメント

 機能性表示食品制度に「規格基準型」を導入する案が浮上している。同制度の枠内で導入するのか、別の仕組みとして導入するのかも含めて、「まだ何もきまっていない」(消費者庁)という。

 来年度予算で実施する調査の結果を踏まえて検討する予定だが、導入案が浮上しているだけで、具体的な方向性は白紙の状態となっている。

 この背景の1つに、さくらフォレストの景品表示法違反事件があると考えられる。事件を受けて、健康食品業界からは「安心して制度を利用できない」といった不満が噴出。そうした不満があるのならば、国が基準を設けて、予め用意した機能性文言を表示する規格基準型が相応しいのではないか、という発想だ。

 しかし、景表法違反に問われたのは、不十分な科学的根拠しか届け出ることができなかった事業者の責任である。さらに言えば、研究レビューを手がけた原料メーカーのレベル感も問われる。機能性表示食品制度が企業責任の下で運用される以上、全ての責任は業界側にあり、その裏返しとして一定の自由度が与えられているのだ。

 事業者が安心して届け出ることができるようにするには、規格基準型のような国の関与が大きい仕組みとならざるを得ない。当然、事業者の自由度は大きく制限される。

 機能性表示食品制度に対する風当たりは強く、消費者団体や学識経験者からは制度の廃止を求める声も聞かれる。内閣府の消費者委員会でも、制度を問題視する声が強まっている。それに加えて、健康食品業界からは「もっと安心できるようにしてほしい」という要望が出ている。

 企業責任の下、これまで業界には一定の自由度が与えられてきたが、今回の騒動で、業界自らがそれを放棄しようとしているようにも見える。

 さくらフォレスト事件を受けて、本来、業界が示すべきことは、自らの襟を正して不適切な届出を排除するという姿勢である。だが、そうした姿勢は見られず、都合の良い要望しか聞かれない。

 こうした状況が続けば、機能性表示食品制度の将来的な廃止も現実味を帯びてきそうだ。記者はそうならないように、業界の努力を期待している。

 規格基準型の導入の是非を考える場合、記者はまったく別の角度から懸念している。それは、一部の民間団体・組織が「利権」を狙う恐れがあることだ。

 仮に規格基準型を導入する場合、(将来的な話であるが)国が民間へ運営を丸投げする方式も考えられる。そうなれば、一部の団体・組織が「利権」狙いで動く可能性も否定できない。機能性表示食品制度が創設される直前の動向を振り返ると、「空想」では済まされないと言える。

 特に、健康食品業界と利害関係のある団体・組織が関与すると、公正で健全な制度運用は期待できないだろう。

 現時点では、仮に規格基準型を導入したとしても、当面はそうした事態にならないと予想されるが、将来的にも「大丈夫」と言える保証はどこにもない。

 事業者の自由度や、企業責任の下に運営されるという機能性表示食品制度の立て付けの問題も議論されると思われるが、そうした点よりも、注意を払うべきなのは「利権」の問題であることを忘れてはならない。

(木村 祐作)

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