【寄稿/第33回】チコちゃんは知っていた!「醍醐味」と乳酸菌生産物質のルーツ

食品/飲料

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

あらゆる乳製品の中で「最上のモノの味」

 去る3月1日のNHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」で、「醍醐味」ってなんの味?というクイズが出た。正解は、あらゆる乳製品の中で「最上のモノの味」で、上質で希少な物の味ということだった。

 そもそも醍醐味とは、仏典の大般涅槃経に記載されている「醍醐」から由来したもの。文言は「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す。醍醐は最上なり」と記されている。

 大般涅槃経は紀元前のインドで生まれた仏典であるが、当時の古代インドの食生活の中で牛乳を保存食として活用するために、5段階の発酵を行って得られた食材としての「醍醐」が各家庭で広く重宝されていたために、仏典にまで記載されたのではないかと私は推測している。

 醍醐は最上のモノとして貴族たちまで普及し、貴重な食材や薬材として珍重されていたために、最上の境地を表す言葉としても使われるようになり、「醍醐味」として表現されて、現在に至っているのだろう。

 光英科学研究所の先代の所長、正垣一義氏は1944年に大谷光瑞農芸化学研究所の次長として、京都・西本願寺の大谷光瑞師のアドバイスを得て、16種の乳酸菌の共棲培養法を編み出した。

 そして、正垣氏は乳酸菌の代謝物を生産することに成功し、現在の乳酸菌生産物質が誕生するに至っている。

乳酸菌生産物質のルーツは2500年前

 それではここで、乳酸菌生産物質の製造工程を念頭に、「醍醐」の作り方を考察してみたいと思う。

 「醍醐」の作り方については、発酵物の物理的変化、香り、味、発酵温度の変化の様子を①牛②酪③生酥④熟酥⑤醍醐の5段階に、見事に区別して表現されている。ここから古代インドで醍醐をつくる際、培養が進展して行く過程を観察する熟練された特技を持っていたことが伺える。

 また、醍醐の発酵に使用する菌(スターター)については、培養するための容器(皮の袋や壺など)の内側に、おそらく常時バランス良く住み着いている複数種類の菌が存在しており、それらが牛乳を栄養として発酵が始まり、複数種類の菌が相互に働いて自ずと共棲培養を形成していたことが考えられる。

 結論を言うと、乳酸菌生産物質の製造に欠かせない16種類の乳酸菌の培養技術も、仏典の中に記載された「醍醐」の存在が礎になっていて、まさに乳酸菌生産物質のルーツは2500年前にあったということになるが…平成・令和の世になって、やっと乳酸菌の代謝物の機能性が科学的に証明されてきていることを鑑みると、ここまでずいぶんと長い年月がかかってしまった。

 テレビ番組ではないが、ボーっと時間を過ごしていると、チコちゃんに叱られてしまいそうだ。

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