沈黙する業界団体
小林製薬の紅麹原料をめぐる問題は、機能性表示食品制度の見直しにつながってきた。消費者庁は5月末をめどに、制度改正の方向性を取りまとめる計画だ。
メディアで報道される各方面の関係者の主張を聞くと、いくつかに分類できる。事実関係を踏まえて語る人、個人の憶測で語る人、小林製薬だけの問題として捉える人、健康食品全般の課題を指摘する人・・・。
別の視点で見ると、機能性表示食品に特有の問題なのか、健康食品全般の問題なのかを整理して検討しなければならないが、そうでもない状況となっている。
興味深いのは、もともと機能性表示食品のアンチ派だった人たちが、一斉に制度の批判を強めていること。消費者団体、学識経験者、法曹界、野党などから、連日のように制度の廃止を含む抜本改正を求める声が出ている。一方、業界側(団体)からは何一つコメントが発表されず、情けない状況と言える。
業界が自ら招いた批判
機能性表示食品のアンチ派には、トクホを擁護する人が多い。企業責任で運営される機能性表示食品制度よりも、国が許可を与えるトクホは安心できるという主張である。
重要なのは、機能性表示食品とトクホを比べて、どちらが良いか、ということではない。有効性についてトクホは致命的な欠陥を抱えているのに対し、安全性について機能性表示食品には多くの課題がある。どちらの制度も一長一短なのだ。
ただし、各方面からの機能性表示食品に対する批判には、納得できる部分も多い。問題なのは、そうした声がこれまでにも出ていたのにもかかわらず、過去9年間にわたり、襟を正そうとしなかった健康食品業界の姿勢だ。これに加え、適切なタイミングで検討会を開催し、制度の引き締めを行わなかった消費者庁の努力不足も否定できないだろう。
なぜ、各方面で機能性表示食品のアンチ派が多いのか、健康食品業界は真剣に考える必要があるだろう。機能性表示食品制度に対する風当たりは強まっているが、それは業界が自ら招いた部分も大きい。
(木村 祐作)
コメント