<コラム> 健康食品の広告に“安全地帯”はない(後)

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 健康食品の広告・表示の“安全地帯”はほかにもある。ステルスマーケティングもその一つだ。ステマについては、バレないから安全という発想である。消費者庁は今後、ステマの検討会を立ち上げて、景表法の観点から規制の在り方を考える方針としている。

 このように、健康食品の販売業者が誤解していた“安全地帯”は、1つずつ確実に解消されてきた。だが、まだまだ残っている。その1つが、健康食品の専門紙・誌だ。

 記者が健康食品の専門紙・誌に努めていたころ、次のような会話が社内で飛び交っていた。

 「(どこかの販売業者に対して)うちはメディアだから、何を書いても大丈夫。だから広告をお願いします」、「ほかの業界紙・誌が(違法な表示を)書いているのだから、あまり厳しい編集ルールを設けないでほしい。営業ができない」などの声が聞かれた。

 健康食品の専門紙・誌は、明らかに薬機法に抵触する広告を堂々と掲載したり、広告とセットで、医薬品的な効能効果を説明した記事を掲載したりしている。そこまであからさまでなくとも、重要なスポンサー企業については、こっそり文中などに違法な表示を潜り込ませることがある。

 書店売りの健康雑誌や、医療機関に置かれるフリーペーパーも、“安全地帯”と誤解されているようだ。特定の疾病の特集を組み、疾病の原因を解説し、疾病予防効果があるとする成分・食品を紹介。別のページに、その成分・食品を原材料に使用した健康食品を宣伝するという手法だ。または、号をずらして掲載する。脱法的な行為だが、堂々と販売や配布が行われている。

 健康食品の展示会も、“安全地帯”として残っている。展示会へ行くと、薬機法に抵触しそうなパンフレットやポスターが目に飛び込んでくる。東京都などが指導しているようだが、押さえ込みに成功しているとは言えない。

 このほか、健康食品の原料メーカーが主催する発表会もある。特定の成分に関する研究成果を発表し、医薬品的な効能効果の説明とともに、自社の健康食品原料(ブランド名も含めて)を宣伝する場である。こちらも“安全地帯”であるという誤解が生じているようだが、薬機法の観点からは限りなく「黒」に近い。

 健康食品の行き過ぎた広告は、消費者にとって迷惑な話だ。違法な宣伝を信じて商品を購入するという経済的な被害だけでなく、効果を過信し、治療を勝手に止めて命を縮めることだってある。そうした悲劇を生まないためにも、健康食品の広告・表示の“安全地帯”が早々に解消されることを期待したい。

(木村 祐作)

(前)

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