<コラム>景表法改正による「確約手続き」の導入

表示・広告規制

 消費者庁は1月23日に召集される通常国会に、景品表示法の改正案を提出する。今回の改正は大幅なものとなり、消費者にとっても企業にとっても大きな意味を与えそうだ。

 改正の柱として、確約手続きの導入がある。これは独禁法で導入済みの仕組みで、企業と行政が合意した上で、企業が自主的に表示を改善するというもの。その代わりに、消費者庁は措置命令や課徴金納付命令を出さない。

 現行の景表法は、行政処分または行政指導の2種類しか選択肢がなく、不注意によってミスした企業も、意図的に違法行為を行った企業も同列に裁かれてきた。業界側は、確約手続きを導入する際、企業名を公表しないように要望している。だが、これは虫の良い話だ。

 当然であるが、参考とする独禁法では企業名を含む概要を公開していることから、景表法でも同様の扱いとする方向にある。

 もし、企業名を公表しない場合、違法な広告を行った企業は事態を重く受け止めないことになり、グレーゾーンの表示を助長する結果にもつながりかねない。このため、景表法に確約手続きを導入する場合には、企業名をはじめ、事件の詳細を公開することが必須となる。

 また、確約手続きでは、課徴金納付命令を出せないことから、運用の仕方によっては違法行為の“やり得”となってしまう。今後、消費者庁はガイドラインで運用方針を示すが、そのなかで、購入者への返金措置を打ち出せるかどうかが注目される。行政処分を出さない代わりに、購入者に対し、自主的に返金させるルールを整備する必要があるだろう。

 このように言うと、業界関係者は「確約手続きを選択するメリットがなくなる」と反発する。だが、自主的に表示の是正や返金を行うか、それとも行政処分として強制的に是正と課徴金納付を行うか、という選択肢ができることは、企業にとっても大きな意味を持つ。例えば、特定適格消費者団体の出方も違ってくるだろう。「葛の花」機能性表示食品や酵素ドリンクの景表法違反事件では、行政処分を受けた各企業に対し、購入者への返金申し入れが行われた。課徴金は国庫に納めるため、購入者を救済することにならないからだ。

 確約手続きは迅速に事件を処理できることから、違法広告による消費者被害を最小限に抑える効果も期待される。早期に公表されれば、当該商品の購入を考えている消費者も思いとどまり、被害者を減らすことにつながる。

 重要なのは消費者庁がどう運用するか、である。運用方法によって、確約手続きは意義深いものになるだろう。

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