【寄稿/第20回】乳酸菌生産物質と共棲培養

寄稿・ブログ

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

タンク内でチーム同士が相性良く発酵

 最近、折に触れて腸内環境が人の健康維持に大切だということが報道されている。それに伴い、腸内細菌の1つである乳酸菌の働きについても、さまざまな効能効果に関与しているというマス広告が目立つようになった。

 そこで、人の健康に関与している乳酸菌生産物質についても、そのメカニズムをわかりやすく説明したい。

 今回は、乳酸菌生産物質の製造の要となる「共棲培養」について説明する。共棲培養は、乳酸菌生産物質を生産する工程で大変重要な技法である。

 16種35株の乳酸菌・ビフィズス菌が120時間、豆乳の培地で発酵してつくり出した代謝産物が乳酸菌生産物質になるが、発酵するための元菌は2~5種類の菌で共棲状態になっているチームを25チーム以上組み合わせて使用する。

 そして、最終大型発酵タンク内でチーム同士が相性良く発酵して、多くの代謝物を生産するというメカニズムである。

何度発酵させても菌のバランスや活性が安定

 その元菌群を集大成したものが16種35株で成り立っている。1種類1株ではなく、1種類数株状態となっており、16種類16株にならない。これが共棲培養の所以である。

 共棲状態にあるというのは、多種類の菌を同じ培養基で、何度くり返して発酵させても、菌のバランスや活性に変化なく安定している状態にあるということ。これは簡単にはできない。年月をかけて菌と相談しながら進める作業となる。

 人相・手相・菌相というが、私たちが生まれてから変化しないものの1つ、腸内細菌もおそらくチームを組んで、多くのチームが共棲状態で腸に住み着いていると想像される。

 毎日、共棲培養をして、健康を守るための代謝物をつくり出してくれている。だから、この代謝物を体外の工場でつくるには、共棲培養が必須となることを理解いただけると思う。

 次回は16種35株を確定するに至った、日本食品分析センターでの「同定」について説明する。

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