孤立したアリは酸化ストレスによって短命に、ヒトでも同様?!

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 産業技術総合研究所などの研究チームはこのほど、孤立したアリでは、体内で活性酸素が増えて細胞を傷つける「酸化ストレス」が多く生じることを発見したと発表した。孤立アリでは集団生活するアリよりも短命になるとし、ヒトを含む社会性を持つ生物でも、同様のメカニズムが働いている可能性があると指摘している。

 産総研、ミツビシタナベファーマアメリカ、ローザンヌ大学などが共同で行った。研究成果は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。

 アリは集団で生活し、複雑な社会性を持つ一方で、小さなスペースで安価に飼育できる。労働アリは寿命が約1年と短く、一生涯を短期間で追跡できることから、実験のモデル生物として採用した。

 まず、1匹で飼育しているアリと、10匹で飼育している集団アリの行動を比べた。孤立アリは壁際に長時間とどまり、身を隠す巣で過ごす時間が短くなるといった行動異常が認められた。

 孤立アリと集団アリの遺伝子発現を比較したところ、孤立アリでは酸化ストレスに関わる遺伝子がよりいっそう変化していた。

 孤立アリの中でも、壁際に長く滞在した個体の方が、強い酸化ストレス応答を示す傾向も確認された。孤立アリに酸化ストレスを抑える薬剤を投与すると、寿命の短縮が緩和されたと報告している。

 研究チームでは今後、酸化ストレスと行動変化の詳細な関係を調査し、ヒトの健康問題の解決につなげたいとしている。

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