肺由来エクソソームを含む細胞の分泌物に高い抗炎症作用

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 東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター次世代創薬研究部の研究グループは5月7日、細菌性肺炎やウイルス性肺炎などによって生じる致死的な急性肺傷害(ALI)に対し、肺由来細胞が分泌するエクソソームを含む細胞外小胞(EVs)が、リン脂質結合タンパク質のアネキシン A1(ANXA1)やマイクロ RNAを介したシグナル制御によって、治療薬となり得ることを発見したと発表した。

 研究成果は、オープンアクセスジャーナル「Communications Biology」に掲載された。

 今回の研究により、HBEC(ヒト気道上皮細胞)-EVsは、急性肺傷害を模倣した細胞モデルで有意な免疫調節効果を示した。HBEC-EVsに濃縮された上位10種のマイクロRNAのうち9種が、免疫関連経路を制御していることがわかった。また、これらのマイクロRNAは Toll-like receptor(TLR)シグナル伝達経路と強く関連していた。

 HBEC-EVsでは、炎症の制御因子WNTとNF-κBシグナル伝達経路を制御するタンパク質の存在が明らかになった。HBEC-EV内のタンパク質の1つANXA1は、FPR2受容体と相互作用し、抗炎症作用をもたらすことを突き止めたという。

 今回の研究を通して、マイクロRNAとANXA1の移送を介したHBEC-EVsによる免疫調節のメカニズムには、TLR-NF-κBシグナル伝達経路が関与し、ステロイドに代わるALIに対する新しい治療薬の可能性が示唆されたと報告している。

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