独自の「考え方」を整理
「免疫」をうたう機能性表示食品の届出を促進する目的で、業界団体の日本抗加齢協会は近日中に、独自に取りまとめた「免疫関係の機能性表示の科学的根拠に関する考え方について」を公表する。
昨年8月、プラズマ乳酸菌配合商品で初の「免疫」表示の届出が公表されたが、その後、追随する事例は出ていない。今回取りまとめた「考え方」は、「免疫」表示の届出を行いやすいように一定の指針を示すのが目的という。
同協会は学術関係者で組織する「機能性表示食品の免疫機能性表示に関する検討会」を設置して検討し、届出の要件に関する独自の「考え方」を整理した。
「考え方」では、科学的根拠に用いる免疫指標として、樹状細胞だけでなく、食細胞やNK細胞、T細胞などの活性化も有用と指摘。これらが複数動いていることが望ましいとした。
これに加え、免疫指標が免疫全体を調整することについて科学的に説明できることが求められることから、作用機序の記載を必須とした。
このほか、「自然免疫」「獲得免疫」に関する考え方も示した。両方を調整していることが望ましいとしつつ、「自然免疫」だけでも構わないとしている。
消費者庁「ハードルは下げない」
消費者庁の担当課は、同協会の「考え方」について「届出ガイドラインに反するものではない」(食品表示企画課)との見解を示す。
その一方で、「団体として公表するものであり、消費者庁としては従来の姿勢のまま対応していく」(同)とし、届出要件のハードルを下げることについて否定している。
消費者庁の見解は主に次の点に集約できる。
- プラズマ乳酸菌には「樹状細胞」を活性化する働きがあるが、免疫指標を「樹状細胞」に限定していない。
- 科学的根拠のアウトプットは生体での体調変化であるべき。
- 免疫指標と生体での体調変化の関連性を合理的に説明することが必要。
- 最低でも(1)~(3)のすべてを満たす必要がある。
過去に多数の企業が届出で失敗した原因は、「指標のみによって何とかしようとした」(同)ことにある。例えば、試験管内の試験や動物実験による結果は示しているものの、生体での根拠が不十分なケースも。また、免疫指標と生体での体調変化の関連性が明確でないケースもあった。
消費者庁の届出ガイドラインでは、NG事例として次の点を挙げている。
「限られた免疫指標のデータを用いて身体全体の免疫に関する機能があると誤解を招く表現、㏌ vitro試験やin vivo試験で説明された根拠のみに基づいた表現、抗体や補体、免疫系の細胞などが増加するといったin vitro試験やin vivo試験で科学的に説明されているが、生体に作用する機能が不明確な表現など」。
消費者庁は、届出ガイドラインで示したこの考え方を引き続き堅持する方針だ。言い換えれば、「樹状細胞以外のほかの指標を用いたとしても、身体全体の影響との関係性をしっかりと説明できればクリアできる」(同)ことになる。
「免疫」表示の届出では、機能性文言の表現も極めて重視される。既に販売されているプラズマ乳酸菌を配合した商品では、「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」旨を表示している。
この表現が医薬品医療機器等法に抵触しないかどうかについて、消費者庁は厚生労働省へ照会した経緯がある。現行の表示内容を逸脱すると、届出要件をクリアできないと考える必要がある。このため、「腸管免疫」など局所に着目した「免疫」表示の届出は、クリアするためのハードルが一段と高くなりそうだ。
同協会が「考え方」で示した「自然免疫」「獲得免疫」については、届出ガイドラインでも質疑応答集でも言及してこなかった。このことから、ケースバイケースで個別に判断されるものと予想される。
(木村 祐作)
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