保健機能食品制度の今後を占う(4)

「食」の機能性

トクホの疾病リスク低減表示、活用されない理由とは?

 特定保健用食品(トクホ)制度の喫緊の課題とは?日本健康・栄養食品協会の土田博・特定保健用食品部長は次のように話す。

 「もっとも大きい問題は、機能性表示食品とトクホのすみ分けができていないこと。対策の1つとして、特定保健用食品(疾病リスク低減表示)をもっと活用する必要がある。しかし、事業者が使いにくい仕組みとなっていて、この点を解消しなければならない」。

 さらに、「疾病リスク低減表示の通知は解釈に明確でない部分があり、また通知にある『医学的・栄養学的に広く認められ確立されているもの』を満たすためには、相当のコストと時間がかかると考えられる。ほとんどの企業では、申請は難しいとみているだろう」という。

 疾病リスク低減表示の許可件数は、2021年12月末時点で12件にすぎない。ある識者は「疾病リスク低減表示の通知は、科学的な面でおかしい。用語の定義を含めた交通整理が必須となる」と解説する。

 疾病リスク低減表示を拡充し、許可件数を増やすためには、許可要件の明確化と通知の見直しは不可欠のようだ。

トクホの衰退は既定路線

 国はトクホ人気の復活を狙っているが、現状を見る限り簡単ではない。制度のスタートからわずか6~7年で、業界は猛烈な勢いで機能性表示食品市場を形成してきた。この大きな流れをトクホ市場へ向かわせることは現実的でないだろう。

 あるトクホ企業では、「トクホ制度がどうなろうと積極的には活用しない。同じような表示が可能で、低コストで済む機能性表示食品制度を活用する」と態度を明確にしている。ほかのトクホ企業からも同様の声が聞かれる。

 トクホ制度の大部分を占め、構造・機能表示を行う「トクホ」「規格基準型トクホ」「再許可等トクホ」については、機能性表示食品に市場を奪われ、“自然死”を待つことになると予想される。また、「条件付きトクホ」は失敗した施策と言われていて、将来的に廃止される可能性も否定できない。

 一方、機能性表示食品が永遠に手を出せない疾病リスク低減表示は、トクホだけに許された領域だ。疾病リスク低減表示の拡充は、消費者の商品選択の観点からもメリットが大きい。この部分がトクホの生き残り策の鍵を握りそうだ。

「トクホが上」?

 「トクホは『上』、機能性表示食品は『下』」という声がある。本当にそうだろうか。

 機能性表示食品制度には「トータリティー・オブ・エビデンス」の考え方が位置づけられている。これは、たった1つの試験結果ではなく、あらゆる研究データを総合的に判断して機能性を検討するというもの。

 一方、トクホ制度にはそうした概念はなく、1つのチャンピオンデータであっても許可されてしまう。科学的な面で言えば、トクホは決して「上」ではない。

 さらに、機能性表示食品の場合、届出資料を誰でも閲覧でき、問題があれば国に申し出ることが可能だ。これに対し、トクホの申請資料は閲覧できず、多くの部分が“藪の中”。問題点があったとしても、外部から監視することもできない。

 反対に、トクホにも優れた面がある。新規成分の安全性確認もその一つ。機能性表示食品では安全性確認が十分でないケースもあるが、トクホの新規成分は食品安全委員会で時間をかけて検証される。このように両制度には一長一短がある。

 早ければ22年度中にも始まるトクホ制度の見直しでは、機能性表示食品とのすみ分け、国の健康・栄養政策との整合性がポイントとなる。「トクホが『上』」といった間違った先入観ではなく、科学をベースとした検討が必要だ。

(つづく)

(木村 祐作)

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