ビタミンC・Eを対象に調査事業を実施
保健機能食品制度の一角を占める栄養機能食品は、食品企業に根強いニーズがある。トクホや機能性表示食品と比べ、機能性を表示するためのルールが明確で、費用も時間もかからないからだ。
栄養機能食品の対象成分はビタミン13種類、ミネラル6種類、脂肪酸1種類の合計20種類。企業の任意で成分の効果を表示できる。ただし、成分含有量が「上限値」と「下限値」の間に収まっている必要がある。
栄養機能食品制度についても見直す予定だ。消費者庁では2021年度に調査事業を実施し、「ビタミンC」と「ビタミンE」について科学的な知見の収集を進めている。消費者庁食品表示企画課保健表示室は、今回の調査事業では既存の表示内容を拡充できるかどうかが大きな課題と説明する。
表示可能な効果の表現は予め国が定めている。例えば、ビタミンCならば「皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」と表示できる。今回予定している見直しでは、現行の表示以外に、新たな効果を追加できるかどうかを検討する。
こうした動きに対し、販売会社からは「機能性表示食品はビタミン・ミネラルが対象外のため、栄養機能食品の表示が増えれば魅力的」という声も。
表示の拡充は、厚生労働省の「食事摂取基準2020年版」で報告された知見などに基づいて行われる。国の健康・栄養政策との整合性が求められることから、消費者庁では慎重に検討するとみられる。
栄養機能食品をめぐるもう1つの問題とは?
栄養機能食品をめぐっては別の問題も浮上している。制度を悪用した表示が横行しているのだ。
その典型例として、「栄養機能食品(ビタミンC)」の表記と並べて「コラーゲン1,000mg配合」とうたう商品などが挙げられる。表示内容は「皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」。この場合、消費者はコラーゲンにも同様の効果があると誤認しかねない。
さらに深刻な問題も指摘されている。例えば、「栄養機能食品(ビタミンB2)」と表示しながら、ビタミンEを大量に配合している商品などがある。この場合、消費者は不足気味のビタミンB2を補給する目的で栄養機能食品を利用するが、実際にはビタミンEを大量に摂取することになる。不足していないビタミン類については、ほかの食品からの摂取も合わせると過剰摂取につながる恐れがある。
これらは今回の見直しの対象にならない可能性もある。だが、消費者が栄養機能食品を適切に利用できる環境の整備も重要な課題といえる。
(おわり)
(木村 祐作)
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