【寄稿/第34回】腸内細菌代謝産物と純正醍醐論

寄稿・ブログ

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

腸内で「自前の醍醐」をつくり出す

 NHK人気番組「チコちゃんに叱られる」でも紹介された、2500年前に古代インドで珍重された保存食品として仏典にまで記載されている「醍醐」について、前回のブログで説明したところ、多くの反響が寄せられた。

 「醍醐」については各方面の方が解説しているが、私は長年に渡る乳酸菌生産物質の研究開発に携わった経験を基に、「純正醍醐論」なるものを自分なりに考察してみた。

 醍醐をつくる際に仏典に表記されている「乳-酪-生酥-熟酥-醍醐」の5段階に区分されていた培養工程は、人の五感から得られた発酵の変化の有様を克明に表現している。

 そして私は、この発酵工程のうち、熟酥から醍醐に至る変化に最も重要な要素があると考えている。この変化が順当に得られるには、生酥の段階に発酵に携わった共棲状態にある複数の細菌の存在が不可欠ではないかと。

 醍醐を完成するには、その当時に培養器として使用していたものに付着し定着した細菌群がカギになっていて、私たちの腸内細菌群と同様に、自然の摂理により獲得したものにほかならないと考えている。

 そのように考えると、私たちも腸内で「自前の醍醐」をつくり出しているということになるのではないだろうか。

 当時は当然ながら腸内細菌学は存在していないが、「醍醐」が生きた菌ではなく、その代謝産物であり、効果が認められたことが、仏典にまで記載された所以なのではないかと思っている。

特有の何かを摂取するだけでは健康になれない

 話を現代に戻す。

 健康に関する問題として、機能性表示食品が取り上げられている昨今だが、制度ができる当時の「規制緩和会議」のメディア記事を拝見したところ、「それだけ食べて健康になる食品はない。規制緩和が国民の期待感だけをあおる結果にならないためにも、リスクに目を向け信頼できる表示を求めたい」と結ばれていた。

 まったく同感である。何か特有の1つを摂るだけで健康になるというものはないと、私は思っている。

 腸内に定着している私たちの腸内細菌群は、多種多様な代謝産物を産生し、一生に渡り人間の健康を司っている。この自然の摂理を忘れないようにしようと思う今日この頃である。

 今回は、1人でも多くの方に乳酸菌生産物質を生活に取り入れていただけるよう、私の考察する「純正醍醐論」について話した。理解いただけたら、この上ない喜びである。

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