(株)光英科学研究所 代表取締役会長
村田 公英 氏
生きた乳酸菌を腸内に定着させることは困難
前回のブログで、共棲培養に使う乳酸菌、ビフィズス菌のチームづくりについて説明したが、今回はチームでつくり出した代謝産物が、私たちの腸内に生まれた時から住み着いている腸内フローラにどのように適合するかについて、筆者の持論となるが、述べてみたい。
筆者が64年前に、20歳で大谷光瑞農芸化学研究所に入社した時のこと。研究室で目前に並んでいる数百本に及ぶ乳酸菌の試験管を見て目を見張った。
そして、仕事に慣れたころに正垣所長に「先生、この多くの乳酸菌はどこから来たのですか」と素朴な質問をしたところ、所長は「いい質問だね。この連中はあなた達のおなかにいる菌たちと同じ種類なんだよ。仲良くしてやってください」との返事をもらった。
なるほど、これが共棲培養をするための原点になるのかと、身の引き締まる思いをした。そして、正垣所長の指導の下に、菌と菌が仲良く働いてくれる組み合わせをして、共棲状態に成るチームづくりに専心した。
その研究過程で体験したのは、相性の良い菌でチームを完成させたものに、新たに単菌の乳酸菌を組み込むことは困難だったこと。この事象を私たちの腸内フローラのチームに当てはめると、生きた乳酸菌を腸内に定着させることは実に難しいことであるという現実が解釈される。
総合力によって健康に寄与
乳酸菌生産物質の製法においては、チームをいくつかつくり、チームごとに組み合わせていく。このように研究室で共棲状態を完成したチームを合わせる形だと、組み込む(共棲させる)ことが可能となった。これは共棲状態の各チームがつくり出した代謝産物を使って、チームとチームとの対話をしていることが推測される。
私たちのおなかの中では、ヒトの腸内に棲む細菌群が互いに代謝産物を産み出し、その総合力によって私たちの健康に寄与することが理解できる。
今、健康食品の市場では、乳酸菌、ビフィズス菌の機能性表示食品の届け出が各種合計で750品目あり、そのほとんどが単機能の代謝産物を関与成分としている。しかし、乳酸菌代謝物の持つ多機能を単一のもので補おうとすることは、現実的には難しいことも理解してほしい。
私たちの健康に寄与するものとしては、やはり総合的に作用する乳酸菌を共棲培養して得られた代謝産物の必要性が問われるところである。
第39回/第40回
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