【寄稿/第10回】乳酸菌は代謝物の時代へ

寄稿・ブログ

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

 2021年の厚生労働省の発表によれば、「100歳以上の高齢者の数は、老人福祉法が制定された昭和38年には全国で153人だったが、昭和56年に1,000人を超え、平成10年に1万人を超えた。平成24年に5万人を超え、今年は8万6,510人(前年比6,060人増)」とのこと。

 日本では人生100年時代が一般的になりつつある。いきいきと健康で長生きすることを目標にしている方も多いのではないだろうか。

 その健康に貢献する素材として、近年の健康ブームも手伝って、乳酸菌に関する認知はここ数年で急拡大しているように思われる。大多数の方々が、「乳酸菌は体にいい」という思考を持っているのではないだろうか。

 もちろん、それは私も正しいことと思っている。人の健康のために、乳酸菌の働きは大きな存在である。

 当社・光英科学研究所では乳酸菌の働き、つまり「乳酸菌を発酵してつくり出される代謝物」に着目して研究を重ねてきた。そして、乳酸菌の代謝物の摂取が健康に大きく寄与することは、学術界の研究によっても近年明らかになりつつある。

 一方、最近のサプリメント市場を見ると、機能性表示食品制度を利用して、特定の乳酸菌による健康機能を明確に表示する商品が増えている。

 機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度である。

 機能性表示食品で見られる乳酸菌による健康機能としては、「整腸」「内臓脂肪」「尿酸値」「肌」「歯茎」「歯肉」「目」「鼻」「睡眠」「免疫」などに対するものがある。これらの維持または改善に関する機能性について届出が行われていて、各メディアで広告宣伝が展開されている。各商品には、健康機能の機能性関与成分として乳酸菌の菌株名が表記されている。

 私は、乳酸菌の菌体だけでなく、その代謝物が健康機能に関わっていると推察するが、機能性表示食品制度のルールにより、乳酸菌の菌株が代謝する物質名については商品上、明らかにされていない。

 光英科学研究所は16種35株の乳酸菌・ビフィズス菌のチームが発酵してつくり出した代謝物を「乳酸菌生産物質」として供給し、多くの方の健康に役立ててもらっている。

 前述したように、各社から機能性表示食品として個々の乳酸菌の機能が届け出されている現状を見ると、多くの種類の乳酸菌・ビフィズス菌のつくり出した、多種類の代謝物で構成された「乳酸菌生産物質」の可能性は、今後も人々の健康増進のために大きく広がっていくことをひしひしと感じている。

 当社は、長年にわたり乳酸菌代謝物の研究を推進してきたが、令和の時代となってやっと、乳酸菌は「代謝物の時代」となってきたと感じている。

 私も81歳になった今、このような時代を迎えることができた。つくづく「健康で長生きして良かった」と思う今日この頃である。

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