<コラム>続・電話勧誘販売の新規制、アップセル・クロスセル問題

健康食品/サプリメント

 消費者トラブルが多発していることを受けて、消費者庁は電話勧誘販売に新たな規制を導入する方針を示している。新規制をめぐり、業界は反発するものの、悪質な手口が横行していることから、多数の消費者団体が支持に回っている。

 国民生活センターは昨年11月30日、テレビショッピング番組を見て注文するために電話したところ、別の商品をいきなり勧誘された上、身に覚えのない定期購入契約となっていたという、消費者トラブルが増加していると発表した。

 その典型的な事例に、番組内で紹介された「拡大鏡」を電話注文した際に、目に良いとするサプリメントを勧められ、1度だけと思って購入したが、サプリメントが定期購入契約になっていたというものがある。これは、通販の右も左もわからない新規参入企業による行為ではなく、業界内で名の知れた企業によるものであり、こうした手口がまかり通っていること自体が驚きと言える。

 ある通販企業の関係者は、「当社も同様のことをしているが、今後アップセル、クロスセルができなくなる」と不満を漏らす。

 ここで整理しておくべき点は、アップセルやクロスセルが問題なのではなく、不意打ち性が問題となることである。番組や広告で紹介していない商品を電話口でいきなり勧誘された場合、消費者はとっさの判断ができなくなり、必要のないものまでも購入させられる可能性が出てくる。特に電話の場合、契約を急かされると冷静な判断ができず、さらに、定期購入契約について「言った、言わない」というトラブルも発生しやすくなる。

 電話勧誘販売は訪問販売と同様に不意打ち性があることから、特定商取引法で厳しく規制されている。一度断った消費者にしつこく勧める再勧誘の禁止、契約書面の交付、クーリング・オフの適用などがある。

 前述したテレビショッピング番組を見て電話注文した消費者に、ほかの商品を勧誘する行為も、不意打ち性が強い。このため、電話勧誘販売の対象範囲を広げて、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌、ウェブページを見て電話をかけさせることも、電話勧誘販売に該当すると定義づける考えだ。

 業界は反対しているが、業界が自らの力で、そうした手口を排除できるのかと言えば、極めて困難とみられる。というよりも、事実上、放置されてきたわけである。また、被害に遭う方は、社会的な弱者とも言える高齢者が多く、何らかの手を打つ必要があり、もはや待ったなしの状況にある。

 まじめな事業者にとっては、新たな規制は迷惑かもしれないが、悪質な手口を使う同業他社によって、多数の被害者を生んでいる現状から目を背けてはならない。業界の力で解決できない今回のようなケースは、法によって消費者を守ることが、残された選択肢となるだろう。

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