【寄稿/第15回】腸内フローラの神秘性

寄稿・ブログ

(株)光英科学研究所 代表取締役会長

村田 公英 氏

 新型コロナウイルスの第7波の国内感染者数も、9月11日で8万1,491人と減少傾向になった。私も感染予防対策として外出を極力控え、自宅での待機を余儀なくされているが、その影響でテレビを見る時間が増えて、ミステリードラマなどを見ることが多くなった。

 英語でいうところの「ミステリー」はギリシャ語の「ミューステリオン」を語源としており、「神秘」や「不思議」という意味で、人知では計り知れないこと、という意味も内包しているようだ。

 さて、今では多くの方がご存知の「腸内フローラ」であるが、これも人知を超えた神秘性を少なからず含んでいるように思う。

 ヒトは母体にいるときは無菌状態であるが、出産と同時に赤ちゃんの腸内に好気性菌(酸素を好む菌)である大腸菌が繁殖する。

 大腸菌がエネルギーを生み出す際、酸素の取り込みが必要となるため、菌の繁殖が進むとともに腸内の酸素量は減っていく。そして、徐々に嫌気性(酸素がない状況)の環境へと腸内は変化していく。

 生後3~4日あたりから、一気に嫌気性菌である「ビフィズス菌」が増殖を始め、腸内細菌の割合の90%以上を占めるようになる。ヒトの生涯の体質を決定するといわれる離乳までの大切な時期を、私たちは「ビフィズス菌」と共に乗り切っているのである。

 離乳すると、ヒトの腸内には「ビフィズス菌」だけでなく、様々な腸内細菌が棲み付くようになるが、一生にわたり腸内細菌のエースとしてヒトの健康を主導する「ビフィズス菌」が生後1週間に出現する様子は実に神秘的であると思う。

 なぜ、生後間もなくビフィズス菌が増殖するのか。

 その理由として考えられるのは、母乳に「ビフィズス菌」のエサとなるオリゴ糖があるからとも言われているが、ミルクで育成する赤ちゃんもいることから、それだけが理由とも思えない。まさにミステリーである。

 このようにして我々が授かった大事な「ビフィズス菌」なので、健康寿命を全うするまで、自分の腸内で大切にしていきたいものである。

 それには食生活や生活習慣に留意することが大切だが、ビフィズス菌と良い友達である乳酸菌生産物質を8歳の時から73年間常用してきた私の人生の健康面について振り返ってみると、その素晴らしさをつくづく実感し、納得している毎日である。

 腸内細菌の神秘性はまだまだある。次の機会をお楽しみに。

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