(株)光英科学研究所 代表取締役会長
村田 公英 氏
他の菌との協力体制が必要
今回も乳酸菌の代弁者の立場で話を続ける。
ご存知の通り、他の生物と同様に、微生物は植物や動物と共生して自然界に広く生存し、単体ではなく、他の微生物と共存して暮らしている。
もちろん乳酸菌も例外ではない。そして、この事はヒトや動物に棲み着いている乳酸菌の状況を見ても確認できる。
ひとつの乳酸菌が生存していくには単体では難しく、他の菌との協力体制が必要であると考えられている。私はそこに自然の摂理の存在があると思う。
ちなみに多くの微生物の中で、この乳酸菌が発見されたのは1857年、今から167年前にフランスの科学者ルイパスツールが酸っぱくなった乳を顕微鏡で調べた結果だった。
そして1900年に入り、ロシアの微生物学者メチニコフ博士が、ブルガリア旅行をした時に人々がヨーグルトを盛んに食べているのを見て、ブルガリア人が健康なのはヨーグルトに含まれるブルガリア菌が腸内に住み着いているに違いないと思い、「ヨーグルト長寿説」を発表した。
しかし、ブルガリア菌は腸に住み着かないことが分かり、この説は覆されたが、これをきっかけにヨーグルトが広まり、乳酸菌の健康効果に注目が集まるようになった。
現在の乳酸菌の科学的解明からも、このブルガリア菌に限らず、生きた菌を食べても人の腸に住み着き、発育するのが困難なことに変わりはない。
私の考察によると、当時ブルガリア地方の人々が食べていたヨーグルトは、一定の健康効果はあったのではないかと思う。理由として、発酵するための乳酸菌は複数種で形成されていて、そこからの代謝産物が存在し、これが人の健康に寄与したものと考えられる。
私の想像だが、メチニコフ博士の作ったヨーグルトは、純粋培養したブルガリア菌単菌を使ったものだったのではないか。これでは充分な代謝産物は生成されず、なかなか健康に寄与することは難しかったのではないかと思う。
微生物には相性の良い菌の友だちが必要
さて、今年3月のブログ(https://shokunojyohoshitu.com/20240327-2/)で、古代インドの牛乳の保存食として、健康効果のある「醍醐」が各家庭で広く重宝されたことが仏典にまで記載されていると話したが、これも複数種で形成された発酵において、そこから得られる代謝産物と同類のものと思われる。
乳酸菌の個々の機能性について、科学的に解明するのは不可欠な事と思うが、自然界において、微生物がひとつの種だけで生き延びることは容易ではなく、種の違う微生物同士で助け合って代謝物を生成し、それを使って時空を経て生き抜いている。
微生物が生き延びるには、相性の良い菌の友だちが必要なのである。この原則を忘れてはならないと思う。
そして乳酸菌群も同じで、自然界で共生しながら自分たちが生き延びるための代謝物を作っているのである。
私は、この自然の摂理をもとに、乳酸菌群がつくり出した代謝物「乳酸菌生産物質」が、ヒトの健康長寿のための物質と確信して、世界人類の健康のため活動を続けている。
乳酸菌と良い友だちの世界は、人生100年時代の健康長寿の世界である。
第37回/第38回
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