(株)光英科学研究所 代表取締役会長
村田 公英 氏
乳幼児期は健康の基本が構築される大切な「時」
今回も私たちの大腸(私は親しみを込めて、大腸発酵タンクと呼んでいる)について、長年にわたり腸内細菌の研究を続けてきた者として、腸内細菌の立場にて話を続ける。
ご存じの通り、人間の大腸には約1,000種類・100兆個以上の多くの細菌が存在しているが、生まれる前、すなわち胎児の腸内はほぼ無菌と言われており、出生の瞬間から周囲の菌に接触することで、またたく間に新生児の体内に菌が棲みついて腸内フローラ(腸内菌チーム)の形成が始まる。

人間の腸に細菌が入るルートについてだが、出生時は、赤ちゃんが産道を通るときに母親の持っている細菌が口から飲み込まれ腸に到達する。帝王切開の場合は病院の環境等から細菌が体内に入ることになる。
授乳時には、乳頭周囲や母乳中に含まれる乳酸菌やビフィズス菌などが授乳時に赤ちゃんの口から飲み込まれて、腸内に定着する。
その後は、赤ちゃんの生活環境から、母親や家族とのスキンシップや抱っこや手指を介して皮膚や口の細菌が伝わり、手を舐める・おもちゃを舐めることで細菌が体内に入る。
大人の場合は、腸壁に隙間なく定着した腸内菌のチームが、体外から入ってきた菌を定着させないシステムを構築しているが、生後6カ月の乳幼児期においては腸内菌チームが確定していない期間なので、赤ちゃんが飲み込んだ細菌は腸に定着する可能性が大きいと考えられる。
従って妊産婦の時期から子どもが生後6カ月を過ぎるまでの間は、母親は特に腸内環境を整える必要があるだろう。生まれた子どもの生涯の健康の基本が構築される大切な「時」であり、この時期こそ、腸内フローラのチームを形成するための自然の摂理を私は感じている。
腸内フローラ形成が寿命に関係
こうして子どもの腸に優良な腸内細菌のチームを形成することで、日々、大腸発酵タンクで代謝物が産生される。その代謝物を腸管から人間が吸収し、人の健康寿命に大きく貢献できる可能性がある。

私たち光英科学研究所は、本来であれば人間の大腸発酵タンクで産生される善玉菌の代謝物を体外(工場)で生産して「乳酸菌生産物質」として皆さまにご愛用いただいている。
体の外の発酵タンクであれば、当社の製法のように人工的に優良な腸内細菌のチームを編成する技術は完成しているものの、かたや生後6カ月ごろまでの乳幼児では「自然の摂理」に委ねられているのが実情である。
その後の腸内フローラを大きく変革することは難しいと言われているだけに、優良な腸内フローラの形成には十分に留意する必要がある。
前回のブログでも話したが、科学的な解像度がメタゲノム解析により上がってきて、腸内フローラの姿や腸内細菌の代謝物がもたらす影響についても、さらにメカニズムが解明されつつある。
人間が誕生する最初の時期こそ、腸内フローラ形成が人の寿命に関係する重要な時である。この認識を前提とした世界的研究開発が進むことを切に願ってやまない。
第58回/第59回

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